会長挨拶
第35回日本耳科学会総会・学術講演会
会長 中川 尚志
九州大学大学院医学研究院 耳鼻咽喉科学分野
この度、第35回日本耳科学会 総会・学術講演会を九州大学耳鼻咽喉科教室が担当させて頂くことになりました。会期は2025年10月29日から11月1日、会場は福岡国際会議場です。教室にとりましては、2007年(平成19年)の第17回(会長:小宗静男先生)以来、18年ぶりの栄誉であります。本学会の発展に貢献できるよう教室員一丸となって鋭意準備を進めております。重責に身の引き締まる思いです。
特別講演やシンポジウムなどの企画をご紹介します。
特別講演のひとつは、開催地である福岡を別の切り口から楽しんでもらうため、福岡地域戦略推進協議会事務局用である石丸修平氏のご講演です。近年、コンパクトシティが都市のひとつのあり方として注目されています。コンパクトシティの基本構想の下、福岡では天神ビックバンを始めとした都市開発が進行中です。中心人物である石丸氏に地域をどのように変えてきたか、変えていくか、お話いただきます。
もうひとつは近畿大学皮膚科の大塚篤司教授です。医学分野ですぐに使うことができる生成AIの著書など、先生のわかりやすい話しは定評があります。先生のご講演で会長自らも時代に乗り遅れないようになればと願っています。
まだ日本では実用化に至っていませんが、準備が進んでいる遺伝子治療について宇佐美真一先生が企画してくださいました。近い将来の医療を知ることができます。耳科学会の会員の半数が開業の先生方です。開業後も耳科手術に取り組んでおられる先生方が実際の医療現場についてお話しくださいます。また、大学で講義をされておられる先生方も多いと思います。どのような講義をされているかを何人かの先生にご披露いただくパネルディスカッションを用意いたしました。
今回は様々な先生の持ち込み企画が多いことが特徴です。おかげで、広く関心がもたれていることをパネルディスカッションや教育セミナーとして取り上げることができました。日耳鼻を始め、耳鼻咽喉科で取り組んでおります補聴器普及の啓発活動に関連して、耳科手術後の補聴についてお話いただきます。日常診療のひとつになった人工内耳ですが、周術期、手術の際の対応は各施設で異なっています。この違い、特徴について取り上げます。最近、終えたばかりの顔面神経麻痺治療のRCT、現在、準備が進んでいます聴神経腫瘍の診療指針の策定について最新の知見を伺います。
会長である私が取り組んできました耳手術の基本、頭蓋底手術、好酸球性中耳炎について、側頭骨解剖と乳突洞削開の基本を教育セミナーで、米国ニューオリンズのチューレン大学のTubbs先生と岩永先生が側頭骨の外科解剖の先端をお話しくださいます。臨床面については頭蓋底手術でチーム医療を行っている脳神経外科と形成外科の先生に他科からみた側頭骨外科を語っていただきます。好酸球性中耳炎は難治性中耳炎の治療として教育セミナーで取り上げます。私の耳科学への入口は基礎研究および留学です。先端の基礎研究の話題を細谷誠先生に企画していただきました。研究で大切なことのひとつは国際的な視点を身につけることと考えています。現在、米国で臨床と研究をされているお二人の先生、柴田清児ブルース先生がアメリカでの耳科医の姿についてお話しくださり、牧嶋知子先生にはインターナショナルセッションでキーノートレクチャーをしていただきます。会長講演はありませんが、二日目の共催セミナーで本学会のテーマを思いついた理由である、私の耳科学への今までの取り組みの話をさせていただきます。どのような状況でも進んでいくという主旨で話をしたいと考えています。
近年、始まりましたインターナショナルセッションもバージョンアップし、初日の第一会場を終日使います。福岡からの台北までは東京より少し遠い程度ですし、ソウルまでほぼ大阪と同じ距離です。MOU(Memorandum of Understanding;協力の基本合意)を結んだ台湾、韓国の耳科学会の理事長先生にご講演いただきます。4つのテーマでセッションを組みました。キーノートレクチャーを韓国、台湾、テキサス大の牧嶋知子先生に行っていただき、両国の耳科学会から推薦いただいた先生、日本の先生の発表で構成しました。是非とも第一会場が聴衆の先生方で埋まり、英語で活発に討論できたらと願っています。二日目も第一会場で英語の講演がありますし、三日目にも海外の講演の先生が含まれています。国内にとどまり、内向きになりがちな今こそ、国際化を改めて目指したいと考え、企画しています。
今回の学会のテーマを「耳科学って楽しい」としました。今までの学会テーマは崇高な、将来を見据えたものでありましたが、私は自分の気持ちをそのままテーマとしました。私自身、耳科学会を母なる学会として育ってきました。新人1年目に初めて参加した全国学会は1986年に新潟で行われた臨床耳科学会でした。また初めて発表した全国学会は1988年度、1989年2月に甲府で行われた基礎耳科学会です。その後、耳科学会の演題発表もしくは企画での講演が毎年途切れないように心がけてきました。留学までは基礎研究を、留学から帰ってきて基礎研究を自分でできなくなってからは臨床演題を発表するようにしててきました。耳科医として、基礎研究、耳科手術、頭蓋底手術、難治性中耳炎などの臨床テーマに取り組んできました。これらは義務感で続けたのではありません。耳のことを考える時間は、今でも私にとって楽しいひと時です。このような気持ちを若い先生方に伝えることができないかと考え、企画を工夫をしました。
企画の一部でオンデマンド配信を行う予定ですが、是非、会場に足をお運びいただき、交流を深めて頂きたいと願っております。私の若い頃もそうでしたが、他大学、施設との交流が明日への糧となります。皆様のご参加・ご来場を心よりお待ちしております。

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